新しい家と子どもの気持ち-引っ越し-

新しい家と子どもの気持ち-引っ越し-

3歳半なので、家庭に経済的な危機が訪れていることはさすがにわかるまい。
しかし、引っ越しでここまで子どもが動揺するとは思わなかった。

不安定は内覧あたりからはじまっていた

引っ越し先の下見の段階で、子どもにとってはおもちゃもなく家具もテレビもなく、大人同士が話をしているばかりだから「早く帰ろうよ~」と言うのはわかる。

持ってきたミニカーを転がすだけで父に怒られたんだもんな。

そんな下見が何回か続いて、「今日はどこ行くの?」「新しいおうち見に行くのよ」「嫌だー、児童館(公園)がいい」みたいなやりとりも何度となくあった。

結局下見には6回ほど行ったが、子どもは常に不服そうではあった。「新しいおうち嫌だ」はこのあたりからスタートしていたのかもしれない。

引っ越し準備でさらに引っ越しに不信感

引っ越しの準備が始まり、子どもにも心の準備をしてもらうように「もうすぐ引っ越しをして、新しいおうちに行くのよ。○○くんの隣のマンションに行くの。△△ちゃんともすごく近くなるよ。」なんてお風呂で話をしたりした。

お父ちゃんとお母ちゃんは一緒だから、どこに行っても変わらないよ、楽しいよ。なんてことも言ってみた。

だから、何となく何かがあることは伝わっていたんだと思う。でもそれが具体的な何なのかがわからず、おびえていたのかもしれない。

引っ越し業者が引っ越し1週間前に段ボールを持ってきた。それを皮切りに部屋の中に段ボールが積み上げられていく。

子はその段ボールに登ろうとして怒られた。「これは乗ったら壊れてしまうのよ、あなたも怪我するのよ」そんな程度で叱りすぎることはなかった。

普段通りの対応。台所でも、火や包丁を使っているシーンではふざけると怒っているし。

最初はいつも座っているソファーの横に2つだけだった小さい段ボールが、そのうち子どもの寝ていた和室の横に15ほど積み上げられていた。

急な変化はそんな時に訪れた。

夜中に秘めた思いを叫ぶ息子

Twitterでも紹介したのが以下のtweet。

引っ越しの2日前の晩、咳などで調子が悪かったのもあるのだが、眠りが浅くうなされて
「なんだよ、なんだよ、この箱いっぱいなんだよ。いらないよ。どこか行くって嫌だよ。知らないよ」と泣きながら叫ぶという事態に陥ったのだ。

これは明らかにストレスだ。数日前から鼻詰まりや咳の風邪にもかかっていたが、この精神的な不安感とともに、熱まで出てしまった。朝には下がるが午後から上がるタイプの熱で、引っ越しの前日には40.6度まで上がってしまい、インフルエンザの疑いも出てきた。平日の引っ越しの間は何とか保育園に居てもらうという作戦はとても無理だった。

引っ越し当日

検査の結果、インフルエンザではなかった、不幸中の幸いだ。

しかし、熱があるのに、埃だらけで知らないおじさんがうろうろしている現場に子どもを連れてはいけないので、ここは義母にお願いすることにした。ウイルス持ちの子を見てもらうのは申し訳なかったが、風邪が悪化してもいけないし、遊んであげることもできないのでこればっかりは仕方がない。

朝から夕方まで、6時間ほどの長い時間だったが、最近は夜の眠りが浅く、風邪のせいで身体が疲れているため、泣いたりごねたりしながらも2回ほど昼寝をしてくれた。

1回目の昼寝の後、連れて帰ろうかと話しかけたが「嫌だー行かない」など新しい家に行くのに抵抗があるようだった。
まさかこんな感じでてこずるとは。
公園に行くような形で、ホイホイと着いてくると思っていたのに。ちなみにお菓子で釣ってもだめだった(レベルが知れる…)。

2回目の昼寝ではかなりすっきりした様子で、機嫌が直っているとのこと。自宅の片付けをしながら放心していたが、我が子の反応を見るべく迎えにいくことにした。
特に抵抗するでもなく、以前の家を通過する際に「なんでこっちなの?」少し嬉しそうだったのでお出かけすると思ったのかもしれない。

子どもと新居

さて、新しい家に入った子どもは、慣れないながらも「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」「おしり探偵」という今もっとも彼にとって重要なテレビの前に釘付けだった。

しばらくして、食材が何もないため外食をしたのだがご機嫌のまま、好きなスパゲッティを食べていた。

子どもの行動原理について書いてある敏感期の本にも書いてあったような、毎日同じであることにこだわっている息子だったが、お風呂やトイレ寝室なんかにも適応を見せた。

ここが狭いとか浴槽が高いとか、アレがないコレがないなんて言わないんだなぁ。偉い。なんだか拍子抜けした、でも良かった。

まだ落ち着いてはいなかった

しかしきっと深層心理では何かが溜まっているのだろう。このまま終わりではなかった。

引っ越してから、2日間は夜中に泣いた。1日目は特に一晩中泣いていた。だからしばらくは、朝活で布団から出るのはやめて、スマホのまま横に居たりした。目が覚めて知らない場所に居ると思わせるのはしのびないからだ。

2日を過ぎると、ベッドの並びを変えてとか枕を変えてとか要望を言い出した。うんうん、従来の感じが出てきた。朝に目が覚めて私が居なくても、「おかあちゃんっ」と叫ぶくらいで、泣かなくなってきた。

徐々に適応していく。

そろそろ聞いてみようかな。「新しいおうちどう?」

「いいんじゃない?」

どこで聞いたか意味はわかっているのか3歳児は、しれっとした台詞を言って走っていった。

後日談 親の話

これは実の母親から聞いた話だが、私が2歳か3歳か、そこは定かではないが、宮津から岡山への引っ越しの際、私の夜泣きがすごかったようだ。
もちろん、何も覚えていない。嫌だともつらいとも何も記憶はない。

環境の変化って、子どもは小さくても全身で感じとるものなんだなぁ。親は親で必死だしね。

これから引っ越しをするみなさん、大人も大変だろうけれど、子どもも相当堪えるようなので、覚悟とケアを。